終 #2

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軽々と 4歳男児を抱えあげ 「捕まえた」 そして、何よりも慈しみを籠めた呟き。 「響、出会えて良かった」 胸に納め、抱く姿の なんと、柔々しく、凛々しい事か。 「ちょ、」 響ちゃんの抵抗なんて 奏さんには、ヘ、でもない。 「オレを受け継いでくれて、有り難う」 奏さんは 息子を初めて抱き締めて 愛を囁く。 響ちゃんはもがく事を諦めて 身動(ミジロ)ぎせずに、ただ、ジッとしていた。 あたしはこの感動的な場面に 自分のマヌケさを悔いていた。 あの時。 奏さんと会えなくなると思ったら いてもたってもいられなかった。 彼に触れたい欲と、触れてもらいたい欲と そして、もうひとつ芽生えた欲。 ウマクいかないかもしれない。 だけど、確かに支えと繋がりが欲しくて あなたの子供が欲しいと 思ったあたしの大欲。 結局、周りのみんなを巻き添えにして 響ちゃんが一番犠牲になって なんてバカな母親なんだろう。 ごめんね ごめんね 響ちゃん。 「おい、華」 響ちゃんのやけに冷静な声に顔をあげる。 背を向けた奏さんにちゃっかり抱っこされ 肩越しにひょこり頭を覗かせている響ちゃんの顔は 端正で 勇ましい奏さんそのもの。 小さな手は父親の双肩に置かれていて 「お前は悪くない」 いつも いつも 響ちゃんは大人だ。 言う事も 考える事も 行動も 全部、大人。 幼稚園に入って、ますますそれは増す一方。 だけどね そんな風に抱っこされて しかもキスまでされて スリスリされて 顔を歪めながら だけど、真顔で言われても 笑っちゃうだけなんだけどっ
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