終 #2

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部屋の中の空気が一気にどよめいた 気がした。 「な、な、な、なんだって!!?」 おとうさんは 完全に勘違いをしている。 「9週目だって」 お母さんはウキウキしながら 超音波画像を机の上に置いた。 「し、しのしの、志伸の……」 「は?」 「ああ、そうか」 「おとうさん、違うの」 焦りまくるおとうさんを横目に あたしはプッと吹き出した。 「おとうさん、違うんだ 志伸さんとの子じゃないの」 「は?」 驚いたおとうさんの顔は傑作だった。 違うんだよ。 お母さんは、優しく微笑み 志伸さんは、現実を受け止め おとうさんは、一気に気が抜けたみたいに 椅子の背凭れに体重をどん、とかけた。 「産みたいのですが」 「もちろん、産みなさい ね、おとうさん」 「ん、あ、あ、あぁ、あぁ!産みなさい!」 なんだか、狐につままれたようだ、とおとうさんは言って 「オレなんか谷底にいっぺん落ちたよ」 志伸さんが笑いながら言った。 「おにいちゃん、……」 お母さんは志伸さんの肩に手をぽんっと置いて 「残念だったわね」 青春ドラマのように 顔を背けた。 あ、あんたがそれ、言うか!お母さん! 「かあさん、案外Sだよね」 「そうかしら」 「親父といいコンビだよ」 「おにいちゃんは前にも言ったけど、自業自得よ」 おとうさんはあんぐり、開いた口が元にもどらず この夫婦の夜の生活を垣間見た気がした。 「キッツいな、かあさん」 「ヴ」 やっぱり、オチはこれか。 あたしは慌ててトイレに駆け込んだ。
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