終 #2

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「ホラ、華ボーッとするな」 「えっ」 目の前で響ちゃんが、幼稚園児の格好をして座っている。 そうだった、響ちゃんはれっきとした ただの幼児。 隣で新聞を読む志伸さんは どこをどう見ても、お父さんそのもの。 そんな時だった。 テレビから流れてくるキャスターの声に 振り返る。 『半導体の革命児ですよねー』 『この度最年少での受賞という事で注目を集めています この人!』 『三神 奏さん!』 「あ」 思わず、出た、音。 『28の時にはフィールズ賞を共同受賞されてますよねー この時も最年少記録更新で、またまたギネスでしたねー』 テレビには どこかの王様が三神 奏に何かを手渡すシーンが 流れていて。 5年ぶりに見た彼は あの日、別れた時のまんま、そのまま 少しも変わらない。 「幾何学と、物理学分野で功績残したらしいよ」 志伸さんの声だった。 「彼の論文はなかなか興味深いよ?華」 「響ちゃん……読んだの?」 「読んだよ」 「読めたの?」 「華、オレをバカにしてるの?」 「……お母さんでしょ」 暫くの沈黙。 「華は、華だよ」 「ぷっ」 「志伸さん、笑わないで」 「もー」 「華」 「何、響ちゃん」 「……いや、また今度にする」 「はぁ?」 このクソ生意気な園児 あなたの子ですよ! どこをどうみても、あなたにソックリで ……久しぶりに見たせいか あ、ダメだ。
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