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肩が冷えて目が覚めた。
横たわるベッドの上で幾度となく瞬きを繰り返して、ノロノロと身体を持ち上げた。
「…どうしてーーーー」
微かな息が漏れるような独り言。
照明のついていない、真っ暗な部屋を見渡して誰の気配も無いことがすぐには信じられない。
ベッドサイドの仄暗い光の中で引き寄せたバッグから携帯電話を取り出した。
約束した時間はとっくに過ぎているし、携帯電話には一つのメッセージも入っていないなんて。
部屋の照明を全て灯しても、ドアの外の気配に耳をそばだてても、この部屋を訪れる人は誰もいない。
カーテンの閉め忘れた窓の外は暗く、ガラスは部屋の灯りに反射して鏡のように部屋の中と私のシルエットを映す。
「どうして…何で?」
誰にも拾ってもらえない言葉。
まだ終わりって言ってないのに。二人で過ごした時間を回想することもないの?
私、さようならもありがとうも言ってないよ…
こんな一方的な切りかたをされるとは想像していなかった。
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