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またいくらか経った。
私はずっと一人だ。
歩いた。
歩いて、歩いて、歩いて。
歩き疲れた。
とても遠い場所に来ていた。
たくさんの人に会った。
【悲しい】を覚えた。
【楽しい】を覚えた。
【苦しい】を覚えた。
【寂しい】……を覚えた。
一人は悲しい。一人は苦しい。
一人は……寂しい。
歩き疲れて、しゃがみ込んだ場所。
大きな大きなな木の下だった。
ふいに影が差した。
大きくて細い影だった。
何かが落ちてきた。
赤くて温かい血だった。
その人は血だらけで、私の前に立っていた。
「貴方はどうして血だらけなの?」
「たくさんの人を殺したから」
その人は悲しそうに呟いた。
涙はでないようだった。
「どうして殺さなくてはいけなかったの?」
「オレはエンドだからだ」
その人は苦しそうだった。
その人は私と同じようだった。
「守る事は出来ないの?」
「まも、る……?」
その人は何も知らないようだった。
その人は、とても寂しがり屋だった。
「オレには守る事なんて、出来ない。
オレは壊す事しか出来ない、それ以外は知らない」
「どうして?」
「知らないから、知らないんだ」
悲しそうに笑った。
こんなに苦しい笑顔は始めてだった。
「知らないなら、知ればいいの」
「どうやって?
守る物も守る人もいないのに。
オレはずっと一人なのに」
「私を守って」
「は?」
「私、足が不自由なの。
長く歩き続けられないの。
貴方は歩けるでしょう?
ねぇ……、私を守ってくれる?」
その人の目から雫が出た。
これが涙だと知った。
その人も始めて流したと知った。
「私はミウ」
「オレはマゴト」
手を繋いだときの温もりも、始めて知った。
エンドの肌も温かいのだと。
二人は知った。
そうして、二人は出逢ったの。
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