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「U」と2人並んで、かつて歩いた道を歩く。
こんなにもこの道は狭かっただろうか。
歩きながら「U」は色々な事を俺に話してくれた。
「U」の体調は緩やかではあるものの少しずつ悪化していっているようで、この夏が過ぎる頃には遠くの地方にある、名のある病院へ入院するらしい。
そこでならあるいは、という両親の藁にもすがる願いなのだろう。
本当はみーちゃんと同じ大学に行きたかったと口を尖らす「U」にあまり悲観的な様子はない。
僕が元気になったら都会に遊びにおいでと言うと「U」は目を輝かせて喜ぶ。
そのコロコロ変わる表情はとても愛らしかった。
──そして、僕と「U」は町の外れにある、全く人気のない小さな小さな「墓地」へと辿り着く。
そこは──「M」の墓だった。
「M」の体調は最後まで戻らずに、僕が高校生の頃町の小さな病院のベッドで息を引き取った。
最後まで彼女は、太陽のような笑顔だった。
貴方が取り戻してくれたものだからと、僕の手を握り意識を失う最後の瞬間まで「M」は微笑んでいたのだ。
それから、ずっと僕は、この町を訪れていなかった。
絶望に打ちひしがれる僕に寄り添うように側に居てくれたのは「U」だった。
一年程して、僕は「U」に甘え、彼女を傷付けているだけになっている事に気付き、会う事すらも止めた。
後には、残された僕と「U」が、まるでか細い糸を絶ち切らないように手紙をやり取りしたり、電話をする事で繋がるしかなかった。
そんな折「U」から体調が悪化し、この町にも居られなくなる旨を伝えられたのだ。
そう思うと、いてもたってもいられずに、僕はこの町へもう一度来ることを選んだのだった。
それは、時間が止まってしまった「M」と何かを置き去りにしたまま進み続けてしまった僕の再会も意味していた。
彼女の墓に手を合わせ、線香を上げる。
後で仏間にも線香を上げてやらないと。
悲しみは風化し、傷は癒えないまま痛みを感じなくなり、僕は残された「U」が何かあった時力になれるようにただ生きる事しか出来なかった。
今年、姉の年齢を追い越してしまった彼女はずっとこうして3人で居たかったと呟く。
そのちっぽけな願いはどうしてこんなにも叶わないのだろう。
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