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次の日、待ち合わせの向日葵畑に行くと女の子は一回り小さな女の子と手を繋いで僕を待っていた。
先日話に出ていた妹だ。
彼女に似た雰囲気を持つその女の子は、彼女よりも人見知りのようでその日一日はあまり僕と話をしてくれなかった。
けれど遊んでいる時だけは、やはり彼女も彼女の妹も太陽のような笑顔をする。
この姉妹はとても向日葵畑に映えていた。
僕と女の子の妹は、そうして少しづつ、お姉さんの方とは真逆のスピードで打ち解けていった。
さて、閑話休題になってしまうが、そろそろ名前について触れなければならないだろう。
しかし今回僕が話しているこの内容だが、僕個人の都合上、名前を伏せる事にさせて貰いたい。
何故なら彼女達の住む町や彼女達個人を特定するような事をして欲しくないからだ。
理由については後述になるが、とにかく今はそう納得してもらいたい。
けれど「女の子」と「女の子の妹」のままではあまりにも不便過ぎる。
なので便宜上女の子を「M」
そして妹を「U」としたいと思う。
僕については、彼女達がつけてくれた、彼女達しか呼ばないあだ名がある。
今回はそれを使わせてもらいたい。
──話に戻ろう。
僕がこの田舎で過ごした時間は2週間も無かった。
けれど、「M」や「U」と過ごした日々は僕にとって一番大切とも言える掛け替えのない時間だ。
自分の街にも友達はいる。
けれど、あまりにも不躾ではあるが、どちらが大切かという質問をされた場合、そんな意地の悪い人間とは話しもしたくないが、それでもどうしても答えなくてはならない場合、僕は彼女達の方が大切だったと即答するだろう。
この話を古い友人にするといつも決まって「成程、では君は彼女達──いや、「M」に恋をしていた、という事かい?」と冷やかし混じりに問われるのだが、それについては否定は出来ない。
けれども、その当時の自分を振り返るに恐らくは、まだ恋という感情では無かったように思う。
「おや、その言い草だとやはり君は、恋をすることになるという解釈でいいのかい?」と中々に意地の悪い質問も過去にあったが(全くに目敏いというか意地の悪い悪友を持ったものだ)この際それについては返答をしよう。
察する通り、僕は数年後、何度目かの再会の時、「M」に恋をする、と。
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