帰れないから

6/24
前へ
/329ページ
次へ
「だったらどんな恩返しなら出来るんだよ。機織りか?」 「それで涼太が喜ぶなら」 「うん、まぁ、喜ばないな」 残ったサンドイッチも食べ終えケータイで時間を確認すると、後一時間もしないで出勤時間だ。 今日は土曜だから、朝からは大学生のバイトが入ってる。 だからフリーターのオレは昼からの出勤。 「おい、相良静」 「何でフルネーム? 静でいいよ。あ、涼太になら『シズカちゃん』って呼ばれても……」 「おい、静」 改めて呼び直すと、静が「何?」と首を傾げる。 「オレ、この後バイトだから。お前も出て行けよ」 「え、何で? 終わるの待ってるよ?」 「お前一人この家に残しておく訳にはいかないだろ」 小学校の時の同級生とはいえ、得体の知れない相手だ。 家に置いておくには不安しかない。 それに、母親が帰って来るかもしれないし。 「バイトの間はお前も家に帰ればいいじゃん。どうせ恩返しの内容は決まってないんだし、後日改めてという事で」 オレのその提案に、静は納得してないのか渋々「解った」と答えた。 まぁ、恩返しとか要らないんだけどな。 .
/329ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2261人が本棚に入れています
本棚に追加