帰れないから

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    ◇◇◇◇◇ 「はぁ……」 コンビニのカウンター内に入った途端に大きな溜め息を吐いたオレに、同じシフトで大学生の中村君が「大丈夫ッスか」と声を掛けて来た。 「何か……疲れた」 「来たばっかりで何言ってんスか」 中村君はオレより一つ年下の19歳。 歳が近いから話しやすい。 確か、真人と同じ大学なんだよな。 「いや、朝から疲れるような事があってさ」 オレが家を出る時に静も一緒に外に連れ出した。 そのまま静は自分の家に帰るもんだと思ってたのに、『涼太が帰って来るまでここで待ってるよ』とアパートの前の地面に座り込もうとするもんだから。 『それだけは止めてくれ』と何とか説得して、やっと出勤してきたのだ。 オレのバイトが終わる時間をやたら気にしていたから、もしかしたら今日もウチに来るつもりなのかもな。 『恩返しするまで帰らない』って言ってたし。 あー、面倒くさい。 「シャキッとしてくださいよ。仕事なんスから」 「解ってるっつーの」 話をしている間にもカウンター前には会計待ちのお客さんが並んでいて、慌てて会話を打ち切った。 仕事に集中だ、集中。 .
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