帰れないから

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「そうだ、藤崎君。来月のシフトなんだけど、しばらく土日は入ってもらえないかな? 休みは平日にするからさ」 カウンター内に入って来た店長の手には、シフト表のメモが握られている。 「いいですけど、何でですか?」 「この間入ったばかりの女子大生、居るでしょ。伊藤さん」 「はぁ」 「いきなり『辞める』って言い出してね。今月のシフト分は何とかするから、来月頼めないかと思って」 何とかする、ってのは代わりに店長が入るって事だろうな。 店長ってのも大変だ。 平日の昼はパートの小林さんも入ってるけど、子供が居るから基本土日は休みだし。 「新しい求人は出してるんですか?」 「出してるんだけどね、応募してくるのは学生が多くて上手くシフトを組めないんだよ」 「はぁ……」と溜め息を吐いた店長がオレの肩にポンと手を置き。 「藤崎君だけが頼りなんだよ。だから、辞めないでね」 笑顔でオレを威圧してきた。 辞めませんとも。 金髪ピアスでも雇ってくれる所なんか、なかなか無いし。 それに、この仕事は楽しい。 天職ってのは大袈裟だけど。 そういえば、静って普段何してるんだ? 大学生? .
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