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夜の7時近くになると遅番の吉田さんが中村君と交代で入って来た。
「お疲れ様」
「吉田さん、お疲れ様です。伊藤さんの話聞きました?」
「あぁ、辞めるんだってな」
吉田さんはオレより二つ年上の二十二歳で、オレがバイトに入った時に指導もしてくれた先輩。
最初は無口で怖そうな男だな、と思っていたが慣れてきたらちゃんと話をしてくれるようになった。
後で聞いたら、オレが金髪のヤンキーだからと警戒してたらしい。
そもそもこの人は仕事は真面目だが、対人関係に問題がある。
「もしかして吉田さん、何かしました?」
「してない。メアド聞かれたから断っただけ」
「何て断ったんですか?」
「『誰がお前になんか教えるか』って」
あー、多分それも伊藤さんが辞めた原因の一つなんじゃないかな?
女の子相手なんだから、もうちょっと優しくしないと。
「吉田さん、相変わらず女嫌いなんですね」
「パートの小林さんみたいにサバサバしてる人は平気なんだけど、男に媚びたように擦り寄って来る女は苦手なんだよ」
言われてみれば、伊藤さんはそんな感じだった気がする。
入った時から『吉田さんカッコイイ』なんて言ってたし。
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