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小学校の時にイジメられていたのをオレに助けてもらった事実があるからか、やたらと静がオレに懐いている気がする。
何だか吉田さんが誤解したのも納得出来ちゃいそうだ。
「泊めてやるだけでも有り難いと思え。ここ、この線」
床に敷いてある畳の縁をビシッと指差す。
「この線からこっちに入って来るなよ」
「僕、寝相悪いから約束は出来ないかも」
「黙って寝ろ、変態!」
部屋の照明を消して、自分の布団に頭から潜り込んだ。
「涼太、もう寝るの?」
「……」
返事をしないまま、布団の中で息を潜めていると。
「涼太はやっぱり優しいね。ありがとう、涼太」
囁くようなそんな言葉が聞こえ、諦めたのか静も布団に入る音がした。
やっぱりって何だよ。
イジメられていたのを助けてもらったのは、静にとって恩返しをしたくなる程重大な出来事だったのか?
あれから何年経ってると思ってるんだ?
それだけ、忘れられない思い出だったのか?
そんな出来事を全く覚えていないオレは何となく罪悪感を感じて、布団の中でギュッと目を瞑った。
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