第二章

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 松の内、お目当ての旦那はんのお座敷を、芸舞妓達は浮き浮きしながら待っている。  うちは昨年、梅扇さんねえさんの名前から一字頂いて‘姫扇’という源氏名をもろた。  晴れて舞妓としてデビューした初めてのお正月。 鳩の目は、御贔屓さんである呉服屋の御主人が書いてくれはった。年が明けて最初のお座敷やったし、まだよう知らんかったから、言われるままに。  今年のうちは、誰に書いて貰うんやろ? そんな事に想いを馳せ、フッと浮かんで消えた影に、胸に微かな痛みを感じた。 迷信や、思ても、微かな希望の光を見てまううちは、愚かやろか。  
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