第二章

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「姫扇の鳩は、まだ真っ白やないか」  京の花街はどこも角松や、しめ飾り、七福神の置物が飾られ、お正月ムードに彩られていた。  おことうさんどす、で始まる新年。 芸舞妓は挨拶周りに忙しい。 芸のお師匠さんへの御挨拶に始まり、お世話になってるお茶屋を巡る。 そんな目まぐるしい年明けの最初のお座敷、梅扇さんねんさんと一緒上がった。  御贔屓さんである馴染みのお客さんの第一声が、その「真っ白やないか」だった。 梅扇さんねえさんがお酌をしながら言笑う。 「今年は、意中の誰かはんに入れて貰うとちゃいますか」  酌を受けるおとうさんが、ほぉ……と笑った。 「姫扇にも意中の誰かが……?」
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