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日が暮れかけた、夕闇の中。ぽつぽつと等間隔に並んだ提灯が淡い光を放ち、夜道を優しく照らしている。
道の両側には、きらびやかな色彩の露店や屋台が所狭しと並び、活気ある声が張り上げられていた。
屋台の焼きそばにたこ焼き、ベビーカステラや綿菓子の食欲をそそる匂いに、祭囃子の音。
典型的だが、大規模な夏祭りの様子を欄干から眺める涼都の足元で、ペタッと灰宮が札を貼った。
橋の真ん中、欄干の根本に貼られた護符は、淡い光を放ち、消える。
「これで、最後ね」
浴衣の裾を手で払いながら立ち上がった灰宮に、東が微笑みかける。
「お疲れ様。あんまり、俺達手伝ってなかったけど、大丈夫だったかな」
「おい、お前はいいとして俺までサボってたみたいな言い方はヤメロ」
舌打ちして睨んだ涼都に、東は微笑んだままだ。
相変わらず、胡散臭いヤツめ。
(その浴衣ひん剥いて、この橋に放置してやろうか)
「あれ? いま、君なんか失礼なこと考えてない?」
考えているのはお前を陥れる方法だけだ、問題ない。
無表情で淡々と考える涼都と、何やら不穏な気配を察知した様子の東に、灰宮はくすりと笑う。
「いいえ。2人が手伝ってくれて助かったわ。きっと、1人だったらまだ『護国札』は終わってなかったんじゃないかしら」
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