365人が本棚に入れています
本棚に追加
護国札(ゴコクサツ)
平たく言えば、文字通りに国を護るための札貼り作業のことだ。
ある領域を『国』に見立て、邪気や魔物から『国』への侵入を防ぐ、退魔術のひとつである。
『国』に見立てた場所の周りを、ぐるりと特別に清めた護符を張り巡らせることで、中の『国』に邪なモノが入ってこれないようにするのだ。
そして今回は、その『国』がこの夏祭りのエリアであり、灰宮家のテリトリーになる。
「にしても、ただの夏祭りに灰宮家の警備とは。随分、豪華だよな」
灰宮家といえば、四大一門のひとつであり、代々退魔を得意とする名家である。
それが今回、桜華のお隣さんの、この地区の夏祭りに警備として依頼され、灰宮家が出向くことになった。
『もしよければ、護国札を手伝ってもらえないかしら』
一週間前。
近場である夏祭りということもあるのか、女子の先輩から集団で囲まれ、誘われ、散々東と逃げていた涼都は灰宮の申し出に飛びついた。
『もちろん、俺でよければ喜んで! 東、せめてお前は先輩とのデート、楽しんでこいよ!』
この時、涼都は実にいい笑顔だったらしい。(後の東談)
女子の集団に置いてけぼりされそうになった東は、慌てて縋った。
『ま、まって! 灰宮、それ俺も手伝うよ』
最初のコメントを投稿しよう!