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白装束はどこに隠していたのか、木製の古風な杖を取り出し、胡散臭い言葉を低い声でと呟き始めた。まさかこれは――呪文、というやつだろうか。
魔法だとか、そういう超人的な展開は幼いうちにとっくに卒業した。それが今現実で起ころうとしている。展開についていけないウィスタリアは半ば諦めて、現状からの逃避を試みた。
しかし、白装束たちは逃亡を許さない。
「逃がすものか」
白装束が杖を高々と振り上げたと同時に、杖に光が宿り、電光という一筋の線と化した。閃光がウィスタリアの背中を貫く。
「っ、あ?」
ウィスタリアは膝をついた。背中で煙の上がる音と、独特の焦げた匂いがする。当然ながら痛い。焦げると形容したが焼けているのではないか? 背中が徐々にひりひりとした痛みを訴えてくる。
何故か蔑むような笑みがこぼれた。
「……これは、痛いな」
「おとなしくしろ、ウィスタリア・ジークフリート。そして我らが教祖に頭を垂れるのだ」
――ああ。俺、捕まるのかな。
ウィスタリアはぼんやりとそんなことを考える。不思議と頭は冷静で、まるで他人事のように近づいてくる二人の白装束を見ていた。
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