第2リハビリ

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  「ごめんね里子ちゃん。大事な時にお邪魔しちゃって。もう帰るからね」 「いっ、いえ、そんな」 母の暴露話に頬を緩める菅さんに、両手を盛大に振って見せる。 「じゃあ三笠さん、宜しくお願いします」 「任せておいてー!」 景気よくガッツポーズした母を見て、菅さんは安堵したように笑った。 そしてもう一度、今度は黒川くんも含めた私達に、深々会釈してリビングをあとにした。 初めて挨拶に来た時の印象のままの、控えめで大人しい彼女の笑顔だった。 「……あの。菅さんは、どうしたの?」 「それよりあんたは悠一くんでしょ!」 「そうだけど、気になる」 「あーん、それにしても悠一くん! 2年待ったわよ! あなたに会えるの本当に楽しみにしてたの!」 あーん、って、お母さん崩壊してる。 「もっと早くに遊びに来ればよかったですね。すみませんでした」 驚くべきことに、そう言って軽く頭を下げる黒川くんは、はにかむような優しい表情を浮かべている。 す、すごい。黒川くんでも、『彼女』の母親の前では多少自分を偽るんだわ……。 よそ行きよ、よそ行き。声色までいつもと違う! などと失礼な感想を抱きながら、早く居場所を作ってあげたくて、ソファまで腕を引いた。 我が家では、壁際に三人掛のソファを配置し、その前に木製のテーブルを置いている。 普段は父と私がソファを使い、母はお気に入りの丸いクッションを携えて、床の様々な位置で寛ぐ。 私に誘導された黒川くんは、素直にソファに座った。 私はその向かいの位置の床に正座して、後から入ってきた父にソファを譲った。 「いやー、黒川くん。きみ、芸術的な顔とスタイルの持ち主だね」 ソファに座るなりの父の言葉に、ぶっと息が漏れてしまう。 これをきっかけに両親からの感嘆攻撃が始まり、応対に困った黒川くんは、始終「いえ」と「滅相もない」を繰り返していた。
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