第2リハビリ

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   黒川くんの家庭の事情は、以前から私が話してあった。 だからなのか、敢えて両親がその辺りを啄むことはなかった。 きっと2人の中では、『来るべき時に』という思いがあるに違いない。 私にだって、まだ未来は分からないんだもの、悲しいことに。 それから、他愛もない会話で盛り上がった後、母が提案した。 「さ、悠一くん。そろそろ里子の部屋を見てやって。あなたの名前がついたモノがそこかしこに転がってるわよ」 「それは、ホラーですね」 あ、これは本音だわね。 ムッとふくれつつ、ソファから腰を上げた黒川くんの側に駆け寄る。 改めて母の方を振り返った時、私は初めて気が付いた。 「……あ、あれ……?」 リビングの片隅に置かれた、ベージュ色の物体。 あれは確か、つい最近までよく目にしていた物。 名前はどことなく、私の大好きなお菓子みたいな……。 「……ベビークーハン……」 そうだ。 加奈子さんがよくあれに赤ちゃんを寝かせて、うちに連れて来ていたから。 バームクーヘンみたいな名前だと私が笑うと、『いやしい奴』だと兄が呆れていた。 でもなんで今、それがここに? 「……お母さん、あのクーハンは……」 「ああ、あれ?」 母は真顔で立ち上がった。 そして真っ直ぐクーハンに向かう。 さっと膝を折り曲げて傍らに屈むと、 「菅さんの赤ちゃん」 そう言って、今度は笑った。  
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