第2リハビリ

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    クーハンの中には、柔らかそうな毛布にくるまれた、ざんばら頭の人形がいた。 青い目は見開かれ、固そうな頬にはそばかすのような点々が描かれている。 どうりで今まで気付かなかったわけだ。 これでは、泣いたり唸ったり出来ないもの。 「……お、お母さん……」 「可愛いでしょー? 菅さんの大事な赤ちゃんなんだから。今はぐっすり眠ってるようねー」 「お母さん……」 本物の赤ちゃんを愛でるような母の様子に。 それきり私には、なにも言えなくなった。 と、肩に何かが乗った。 添えられるような暖かみある感覚に振り返ると、黒川くんがすぐ背後に立っていた。 彼の大きな優しい右手が、まるで自己主張するかのように多くを語っていた。 そうだ。 もう、会ったし、見たんだもんね。 「……お母さん」 「なあに?」 「黒川くんに、菅さんのこと話してもいい?」 「そうねえ。どうせ後日あんた達の間で話題になるなら、今話した方が正しく伝わるわよねえ」 それは確実に言えること。 後日というより、私の部屋に移動したらきっと、黒川くんは私に訊ねてくるはずだもの。 そして、これも母のいう通り。 私には、正しく伝える自信がない。  
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