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正直な話。
17年間生きてきて、これまで数知れない女子から告白されたというのに。
誰一人、本当に誰一人。
たった一人も、名前を覚えていない。
チチェン・イッツァやテノチティトランやテオティワカンはその日の授業に読んだら覚えて。
翌朝にはもう、どれがどこの何かまですっかり暗記していたのに。
覚えていない、というのは間違いか。
最初から覚える気がない。
耳に入ってこない。
まして名乗らなければ敢えては聞かず、これ幸いと放置する。
そんな日常が定番化していたある時。
自分の中で革命が起きた。
この間告白された女子の名前を、ついに
覚えてしまったのだ。
―『ミカササトコ』―。
高校生活は特に何も変わらない。
『ミカササトコ』が自分に与える影響は何もない。
用事を済ませてしまった今後、もう二度と接触することはないだろう。
そう。
確かに残ったのは、彼女の『名前』と、姿だけ。
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