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とまあ、人物紹介はここまでだ。
全員紹介したからっていう理由もあるがな。
さて。
黒川の冷めた反応は、橘からすれば想定の内だったらしく、さして気を害する様子もなく弟にスマホの解説を始めた。
文字の打ち方を伝授したり、画面拡大を披露したり、まあ、スマホの基礎の基礎を得意気に実践してみせる。
そして、話題の『LINE』の解説へ進み、次に『ゲーム』の紹介へと移った。
「無料ゲームたっくさんあるよー。みんながはまるの分かるよねー。街中にわんさかいるスマホ中毒の大半がさ、ゲームに夢中になってんだよね」
「どんなゲーム? 例えばドラクエみたいなRPG?」
「うーん。そういうのも沢山あるけど、やっぱパズルゲームみたいな類いじゃない? 大半がソーシャルゲームで他人と繋がるから、楽しくて仕方ないみたい」
「ふうーん」
「いんや。全てがソーシャルゲームってわけじゃねーぞ」
俺は以前、後輩が連載していた特集を手伝ったことがある。
その内容は、今橘が話題にしている、いわゆる『スマホゲーム』がテーマだった。
「なーに? オジサン、スマホゲームに詳しいの?」
「俺はテメーのオジじゃねーぞ」
「いちいち面倒臭いなぁ。水野さんくらいの年齢層の総称でしょうがー」
「やかましいわ」
「で、オッサン。ソーシャルゲームじゃないってのは、一体どういう意味だ?」
「……」
興味の欠片もなさそうな顔しやがって、聞いてることはちゃんと聞いてる辺りが、ヤツの恐ろしいところだ。
もうオジサンでもオッサンでもどーでもいい。
この家にお邪魔した時の俺の定位置、ダイニングテーブルの椅子から、のんびり立ち上がって橘の隣に移動した。
もちろん、自分のスマホも携えて。
「ほら見てみろ。ここで大量に紹介されている数多のゲーム。中でも人気なのが、パズドラだ」
「あ! よくCMで見るやつ!」
「これはソーシャルゲームなようで、ソーシャルゲームじゃない」
「えー? だって、仲間呼んだり課金したりするんでしょ? ソーシャルゲームの典型じゃないの?」
「いんや、これはネイティブアプリゲームだ。ウェブブラウザから取ってるゲームじゃない」
「ふむ。ネイティブ……。つまりは、スマホ専用ゲームということなのか」
「そういうことだ」
黒川がいつの間にか座椅子から立ち上がり、フラフラとソファの背後に回っていた。
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