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「息子のスマホゲーム依存症が酷く、例えばスマホを取り上げたら、気性が荒くなり暴力行為に走る」
「ふん。俺が以前付き合った取材の中でも何人かいたぞそんな輩は」
「課金も凄くてさ、月の請求が10万超えてたよ。息子くん、中学生だよ?」
「病気さ。……で、お前ら助けたのか?」
「まあな。だがあんなのは一時的な凌ぎにしかならない。結局鍵になるのは、親の意志の強さだろ」
「というと?」
そういうのは本人の強い意志じゃないのか?
「子供に限っては親の意志だ。どれだけ買い与えずに我慢出来るか。どれだけ周囲に惑わされず堪えられるか。ねだる子供に対抗出来るか。これは恐らく相当の忍耐力が必要だ」
「ふーむ」
なるほど。言われてみりゃ、そうだぁな。
娘に関しても、俺と嫁の方針がたまたま一致したからこうしてうまく機能しているわけであって。
片方が少しでも娘に同情したら、今頃ツムツム三昧か。
「ゲームが悪だとは一概に言えない。需要と供給のバランスが取れているのなら、立派なビジネスであり、娯楽だからな。ただ、俺は興味ない。それでいいか? オッサン」
顎に手を添えて唸る俺に、黒川が視線を寄越してきた。
見ると随分心得顔をしてやがる。
あーあー、このヤツの表情は、「よーしよし良い子だねー。お前の大好物をやるから安心しろよー」だ。
俺は犬じゃねーぞ全く。
「オッサン」
「あん?」
「俺がA新聞をとっていることを、あんた知ってるだろう」
「ああ、もちろん」
「こないだ3週にわたって掲載されたコラム。題名は【スマホリック・顔付きの変わった若者たち】だ。あんたが付き合ったという取材は、このコラムのものだろう」
「ぎょっ?!」
なぜそれを!
「コラムを書いた遠丸って人は、あんたの後輩か崇拝者か。俺はてっきりあんたのコラムかと勘違いした」
「ぐっ……」
「あのコラムはあんたの言いたい事だ。途中から乗っ取ったな、厄介な先輩め」
「……」
ぐうの音も出ねぇ……。
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