第4リハビリ 【黒川悠一、人生初、誰かに敗ける日?】

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     ◆◆◆◆◆     「いいか? 俺はあんたの不正を見逃すわけにはいかねーのさ。学生はみな平等だ、そうだろ? あんたがいくら成績優秀者でも、特別扱いはよくない」 神辺貢は、重厚な栃の1枚板を挟んだ向こう側に座る美しい青年を、舐めるように眺めた。 男にしておくには勿体無いと、貢は本気でそう思う。 どこか中性的で優美な物腰の青年は、学内に蔓延する噂通りの、類い稀なる容姿の持ち主だ。 これが女だったら力ずくでも自分のものにするだろうと。 必ず手に入れるだろうと。 貢には、そういった出所の分からない不明瞭な自信が、常に全身にみなぎっているのだ。 「で、俺にどうしろと」 青年がようやく声を発した。 実のところ貢はイライラしていた。 自分が何者かを告げた時も、その上で脅迫した時も、青年は顔色ひとつ変えなかった。 眉ひとつ動かなかった。 およそ感嘆や驚愕や恐怖などといった表情も息遣いも、一切表に出てこない。 一体いつになれば、あの真一文字の口が『謝罪』を絞り出すのだろう。 今までの経験で、人が何を言えば不快に感じ、屈辱に顔を歪めるか、貢は心得ていた。 目の前にいる青年も、十分の題材を揃えていたぶった。 それなのに、動かない。 じれったい、腹立たしい。 自分が収集した情報に誤りがあったのだろうか。 いや、そんなはずはない。 苛立ちがピークに達しかけた矢先に、ようやく青年が言葉を発したのだ。
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