161人が本棚に入れています
本棚に追加
/122ページ
してやったりと貢の胸は躍った。
これはもう、陥落したも同じだ。
後はこちらの要求を飲ませるのみ。
貢は右手で口元と顎を覆い、ゆっくり、しかし大きく息を吐く。
視線を伏せ、栃の1枚板に鏡のように映った逆さまの青年の顔を眺める。
「殺ってほしいヤツがいる」
栃の中の青年は微動だにしない。
貢は視線だけを本物の青年に向けた。
「いや、正確には、運良く生き延びたふざけた野郎から、『運』をむしりとってほしい」
本物の青年の顔も、微動だにはしなかった。
最初のコメントを投稿しよう!