第2リハビリ

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  そうは言っても、駅から三笠家までの距離は徒歩でおよそ5分。 自分の住む街を案内して歩くほどのものではない。 心の準備を整える間もなく、茶色い我が家の屋根が見えてきた。 「……うへー、緊張する」 「『うへー?』」 「あ、ごめん。色気も何もないわね」 「……お前。肝試しやお化け屋敷で『きゃー』とは言えないタイプだろ」 「お察しの通り」 「まあ、明確に『きゃあ』と発する人間にお目にかかったことはないが」 「可愛いわよね、咄嗟にそれが出れば。私なら多分……」 「多分?」 「『ぎょえー』」 「……」 黒川くんはまじまじ私を眺めて、最後に憐れみのこもった意味深な視線を残してから、何事もなかったように前に向き直った。 ふん、いいのよ別に。 私に色気を期待する方が間違いよ。 「しかし、なぜにお前が緊張する? ここで緊張するのは本来俺じゃないのか?」 話題の主旨が元に戻って、ホッとしながら彼を見上げる。 そこには緊張の欠片も見出だせない真顔。 「そうなんだろうけれど、黒川くん、全然してないでしょう」 「いや。多少は緊張している」 「それは嘘よっ!!」 「嘘とは失礼な。まあしかし、結婚の挨拶に行く訳じゃないからな。彼氏という立場で家に遊びに行くシチュエーション。まだまだ逃走可能な位置だ」 「逃走っ?!」 「そうそう」 「……ひどすぎる」 という、結局また色気も何もない会話を終えたところで、我が家に到着した。  
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