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そう思っていた魔法使いは、言いつけを守って黙っている薬師と目を合わせて首を傾げると、無表情に立っている剣士に視線を向けた。
「人間大陸で世界武術大会があるから、一回出てみたい」
「あー……」
世界武術大会とは、勇者の国で行われる武術なら何でもありなトーナメント式大会である。
その国で勇者を拾う前、剣士が興味深げにそのチラシを見ていたことを思い出した魔法使いは、納得したように頷いた。
強さを求める剣士が出たいと思うのも、無理はない。
どうやら剣士が先ほどから仕切っていたのも、勇者のためではなかった様子だ。
「ちなみに、申し込みの締め切りは今日の夕方まで。だから、まぁにぃ。転移して」
「よし、けん。そういう大事なことは事前に言っておこうね!?」
「今言った。早く」
「ああもう!ほら、さっさと転移するから手握って!」
「ん」
「くぅちゃんもー!」
剣士の締め切り期日を聞いて、大慌てで転移して消えた勇者一行。
世界武術大会が開催される、勇者の生まれ故郷へ。
未だに気絶中の勇者にとって、ふりだしに戻ると同様の地へと。
気絶している間に魔王城前からふりだしに戻ったが、修行をしながら耐えるんだ勇者!
耐えればいつかきっと、いいことがある!
胃が頑丈になるとか!
ちょっとのことでは動じない強気な心とか!
だから、頑張るんだ勇者!
いつかきっと、魔王城に辿り着けることができるから!
いつまで魔王が待っているかは知らないが!
それでも最後は魔王城に辿り着ける、はず!
頑張れ、勇者!
きっと未来は明るくはないが!
グレートアップする予定の胃薬に頼りながら、ファイトだ勇者!
「申し込み、間に合った」
「くぅちゃんも申し込んだー!」
「修行ついでに勇者も申し込んでおいたから、しばらくはこの国に滞在だなー」
「う……」
「あ、勇者様起きた」
「勇者、おはよーさん。気分はどうよ?」
「な、な、な……なんで国に戻ってきているんだぁああああ!!?」
「勇者、完全復活」
「めでたしめでたしー?」
「理由も言わずに締めるなぁあああ!!」
「「「どんまい、勇者(様)。はっ」」」
「最後鼻で笑うなぁあああ!!(泣)」
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