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息苦しいまでの魔力が、辺り一面に漂っている。
人間たちが住む大陸よりも、その魔力の濃さは桁違いだ。
膨大な魔力を持つ自分でさえ息苦しいと感じるのだ。
仲間は、大丈夫なのか。
勇者である自分の仲間は本来なら城から騎士団長の娘や魔法師団長の娘、神官長の娘が着いてくるはずだった。
しかし、王子である勇者との縁を作ろうという魂胆が丸見えだったゆえに遠慮してもらったのだ。
というよりも、彼女たちに見つかる前に全力で逃げた。
あんな肉食動物みたいな目をした彼女たちと一緒に旅なんてしたら、魔王を倒す前に勇者の貞操が危ぶまれるに違いない。
捕食者たちは全力で追いかけてきたけど。
そんな捕食者の目をした彼女たちから逃げている時に匿ってくれたのが、今の仲間だ。
魔法使いの青年に剣士の少年、薬師の少女。
「みんな、大丈夫か?」
これほど濃密な魔力、常人なら耐えられるはずがない。
彼らに辛そうな様子がみられた場合は、少しでもこの魔力に慣れるために休憩をすべきだろう。
そう計画を練りながら仲間を振り返ると、そこにはごく平然とした仲間たちが立っていた。
「「「は?」」」
何が大丈夫なんだ?と言わんばかりの様子で。
どうやら、勇者一人の杞憂だったらしい。
膨大な魔力を保有している勇者でもこの濃密な魔力に慣れずに息苦しくて顔色も悪いのに、平常と変わることなく立っている仲間たち。
「……ん?」
そんな仲間を見ながら、金髪碧眼のイケメン勇者は首を傾げた。
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