ふりだしに戻って大会に出場です

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「勇者様。くぅちゃん、放す」 「がっ!?」 むっとした表情で、目の前にあった勇者の顔面にむかって背伸びをしながら頭突きをする薬師。 勇者よりも頭一つ分低い薬師が背伸びをした結果、その頭は見事なまでに勇者の鼻に直撃。 不意打ちの上にあまりの痛みに鼻を押さえてしゃがみこんだ勇者だが、常人なら骨を折っていても可笑しくない勢いであったがゆえに、いかに普通の人間よりも頑丈なのかがうかがえる。 「くっ……」 自慢ではないが、自国では王子という身分も手伝って、女性が放っておかない容姿をしている勇者。 そんな勇者が、鼻を押さえながら涙を浮かべている。 しかも指の隙間から赤い液体が流れているように見える。 整った顔立ちを潰す勢いの頭突きを繰り出した薬師こそが勇者ではないだろうか。 ……当の本人も自分のオデコを押さえて蹲っているところを見ると、ダメージを受けている様子ではあるが。 「あうあう……」 涙目になって呻いている薬師。 そんな薬師の所にすぐさま駆け寄る魔法使いと剣士。 「おわ……頑丈な勇者に頭突きするとかくぅちゃんの頭は大丈夫かなー?おにーさんにオデコ、見せてごらん」 「ふぇえん……くぅちゃんのオデコ、頑丈なのにぃ……」 「くぅ。いくら石頭でも、相手が勇者なら気を付ける。打ち身の薬塗るから、前髪上げて」 「うー……」 「……俺が、被害者のはずだよな?」 甲斐甲斐しく薬師の面倒を観る魔法使いと剣士、そして放置される勇者。 本当にどこまでいっても勇者の扱いが雑な愉快な仲間たちである。 あまりの扱いの差に遠くを見ながら胃薬(グレートアップ済み)を飲む勇者に姿が、憐れの一言でしか言い表されない。
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