ふりだしに戻って大会に出場です

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思わず黙ってしまった勇者の沈黙を了承と取った魔法使いは、むくれていた薬師の頭を撫でながらニッコリと笑いかける。 「くぅちゃんなら、けんにあたるまでは(実験しまくるために)勝ち進めるから(おにーさん達を生贄にしなくて済むように)頑張ろうなー」 「うん!」 可愛い妹分のご機嫌をとりながら、自分の身の安全を確保しようと根回しを忘れない魔法使い。 「くぅ。(勇者の時は別にどうでもいいから)俺と当たった時は、普通にやろう」 「分かった!」 お互いの士気を高めるためのような口調だが、その実は自分一人だけでも逃れようと奮闘する剣士。 もちろん基本的に無邪気な薬師は副音声等聞き取るスキルは身に着けておらず、満面の笑顔で頷いている。 本当に無邪気なままに勇者パーティーを危険に陥れる可能性が高い人物である。 恐らく魔王より厄介な人物であろう。 そんな愉快な仲間たちを前に、俯いた勇者の手が強く握りしめられた。 よく見れば、その拳はかすかに震えている。 そんな彼の前で、小さな握り拳を作ってニコニコ笑顔を浮かべる薬師。 「くぅちゃん、いっぱい頑張る!」 「おにーさん(俺たちにモルモット役が回ってこないように)応援しているから、くぅちゃん頑張ってねー」 「俺も(くぅの犠牲にならないように)頑張る」 やっぱり副音声が聞こえてくる魔法使いと剣士の言葉に、勇者の目がカッと見開かれた。 「……色々含みすぎだろ、お前たちはぁあああっ!!」 「「それのどこが悪い」」 「大会、楽しみー!くぅちゃん、いっぱい準備する!」 勇者怒りの絶叫は、もちろん愉快な仲間たちに届くはずがなかった。 見事なまでの開き直りと、無邪気で不穏な台詞である。 一体薬師は何を準備すると言うのだろうか。 「……だれか、こいつらの手綱の握り方を教えてくれ……」 恐らくそんな方法はないだろう。 頑張れ勇者!
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