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……仲間の紹介をしてて思うんだが、勇者は必要なのかってくらい仲間が強すぎる。
色々な方面で。
魔法や剣技で魔法使いや剣士に勝てたことがないし、薬師のようにドラゴンを無傷で狩るなんて芸当、今の自分にはまだできない。
はっきり断言しよう。
この中で一番弱いのは、まず間違いなく自分である。
魔王討伐に関しては、心強すぎる味方たちだ。
「……行くぞ」
一度頭を振って雑念を追い出すと、腰に差していた王家に伝わる聖剣を抜き放つ。
魔王城は、すぐ目の前。
魔王の元へ、あと数刻で辿り着くであろう。
……後のマイペースな仲間たちがスムーズに動けば。
「え、もう行くの?咽乾いたし、お茶にしようよ」
「……腹減った」
「まぁちゃん、薬茶いる?けんちゃん、薬草サンドイッチ食べる?」
「くぅちゃん。おにーさん、どっこも体悪くないから普通の飲み物がいいなー。というか、おにーさんが作るから、くぅちゃんは座って待ってなさい」
「薬草抜いたサンドイッチくれ」
「むぅ……」
……まさかの、魔王城の城門前でレジャーシートを広げてピクニックを始める仲間たち。
「お前らは、緊張感というものを持ち合わせていないのか……!」
思わず頭を抱えて呻いてしまった勇者を、誰も責められはしまい。
そんな勇者の前に、とことこと近づく薬師。
「勇者様、イライラは体に良くない。(実験前の)薬湯あげる」
「ちょっと待とうか、くぅ殿。薬湯の前に何か小声で呟いただろ、今!」
「気のせい。さっさと飲め」
「しかも命令形できたか!?そんなに俺で実験したいのか!?」
「勇者様、頑丈で素晴らしいモルモット」
「何爽やかに言い切っているんだ!?その本音は隠してもらえると俺の精神衛生上いいんだが!?」
薬師の正直すぎる言葉に、突っ込む勇者。
最後の全力の勇者の叫びに、キラキラとした笑顔を浮かべて親指をぐっと立てる薬師。
「どんまい」
「誰のせいだ!誰の!」
「勇者様?」
「今までの会話の流れからして、どうしてそういう結論に至るんだ!?」
「勇者様だから?」
「……」
言い返したいのに、言い返せば言い返すだけ倍になって帰ってくる薬師の言葉に、勇者は崩れ落ちた。
それでもちゃっかりレジャーシートの上であるところをみると、この勇者、潔癖な面もあるやもしれない。
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