枯れた華

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視線を隣のベッドへと移す。 「…まだ帰ってないのか。宮坂先生、今日も緊急オペですか?それとも……」 皮肉を込めた苦笑いを浮かべる。 「仕事もプライベートも充実していらっしゃる様で何よりですわ。旦那さま」 ベッドから立ち上がり、床にずり落ちた毛布を引き上げる。 持ち上げた毛布をベッドに投げ捨てると、パジャマのボタンを外しながらシャワールームに向かった。 私の名前は、宮坂 亜紀(ミヤサカ アキ)33歳。 職業、大学附属病院の循環器内科医師。 5年前に同僚の医師と結婚。 循環器外科医の夫は、週の半分が午前様の帰宅になる程に何かと忙しい。 そう、「何かと」忙しいらしい…。 互いに多忙な毎日 すれ違いの生活 子供にも恵まれず… 最後にセックスをしたのはいつだったか… そんなものは、記憶から消してしまった。 何も変えようとしないお互いの意識。 同棲? 同居人? 夫婦である意味さえ、分からなくなる。 それが 私たち夫婦の虚しい現状だ―――
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