16216人が本棚に入れています
本棚に追加
視線を隣のベッドへと移す。
「…まだ帰ってないのか。宮坂先生、今日も緊急オペですか?それとも……」
皮肉を込めた苦笑いを浮かべる。
「仕事もプライベートも充実していらっしゃる様で何よりですわ。旦那さま」
ベッドから立ち上がり、床にずり落ちた毛布を引き上げる。
持ち上げた毛布をベッドに投げ捨てると、パジャマのボタンを外しながらシャワールームに向かった。
私の名前は、宮坂 亜紀(ミヤサカ アキ)33歳。
職業、大学附属病院の循環器内科医師。
5年前に同僚の医師と結婚。
循環器外科医の夫は、週の半分が午前様の帰宅になる程に何かと忙しい。
そう、「何かと」忙しいらしい…。
互いに多忙な毎日
すれ違いの生活
子供にも恵まれず…
最後にセックスをしたのはいつだったか…
そんなものは、記憶から消してしまった。
何も変えようとしないお互いの意識。
同棲?
同居人?
夫婦である意味さえ、分からなくなる。
それが
私たち夫婦の虚しい現状だ―――
最初のコメントを投稿しよう!