枯れた華

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「で?この後はどなたとデート? 例の副社長?えっと…会社名何だっけ?」 「副社長?…ああ、その男とは別れた」 「別れた!?だって、付き合って2ヶ月くらいしか経ってないんじゃ…」 「2ヶ月付き合えば相手を知るのに十分。結果、2ヶ月以上付き合う魅力を感じなかっただけ」 「魅力を感じなかっただけって…」 私は麗香と同じ並びにある5つ離れたロッカーの扉を開け、表情1つ変えずにスパッと言い切る麗香の横顔をまじまじと見つめた。 「得るものの無い男と付き合う意味なんてある?それなりの危険を犯してるんだから、それなりの価値がないとね」 麗香はマスカラのチェックを終えると、私に視線を向けニッコリと笑った。 「…今回も結婚してる人なの?」 「当然!W不倫は決まり事。今回のお相手は48歳の……職業はまだ秘密。近々会わせてあげるよ」 W不倫は決まり事って…一体なんのための決まりなんだ? 「あ…うん。それにしても48歳って、麗香と一回り以上違うじゃん。相変わらずおじ様好きだね」 私は愛想笑いを浮かべながら、仕事用のシンプルなベージュのスカートを脱ぎ、紙袋からガサガサと黒のタイトスカートを取り出す。 「当たり前でしょ。若い男なんて煩わしいだけ。大人の暗黙の了解も理解出来ないし」 「大人の暗黙の了解って言うより、不倫の暗黙の了解。でしょ?」 私はスカートのファスナーを上げながら、苦笑いを友人に向ける。
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