プロローグ

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……アキ…… ……アキ……のむ……………てくれ…… 遠退いていく意識の中。 霧の奥から渡るような呼び声が、切れ切れに流れ込んでくる。 誰?私を呼ぶのは...... ……痛い。 体中が痛い… 手も足も痺れて… 動けない…… 背中には生温かなぬめりが広がり、体中には刺すような痛みが走る。 …どうして? 私の体、どうなってしまったの? 「亜紀っ!目を開けてくれっ。頼む、目を開けてくれっ!」 私の体を深海から引き上げるかのように、悲痛に満ちた声が聴覚に届いた。 真っ暗な無の世界を彷徨っていた私はゆっくりと瞼を開き、霞む視界に映り込んだ人影を見る。 「…今泉さん…良かった……無事で……」 血液の流れ出る体で屍のように横たえたまま、私は息絶えそうな弱々しい声を漏らし、愛しい人を見つめて安堵の笑みを浮かべた。
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