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「どうしてこんな事に…すまない……俺のせいだ…全ては俺が……」
彼は深紅に染まった私の体を抱き起し、瞳に涙を溜めて大きく顔を歪ませた。
すまない?
どうしてあなたが謝るの?
どうして私はここで……
途絶えることの無い痛みに連動し、走馬灯のように蘇る数分前の記憶。
「ああ…そうか……だから私……」
「すまない、亜紀…。俺はずっと、お前に嘘を……」
彼の頬に一粒の涙が零れ落ちた。
今泉さん……
私は腕にのしかかる脱力感を振り払い、震える指先で涙が伝う彼の頬に触れた。
「いいの……これで。やっと、本当に自由になれたんだもの……これで私は、あなたのものよ…」
「亜紀……」
「言って…今泉さん……愛してるって。これが最初で最後になったとしても…聞きたいの…」
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