消えた真実

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家族との絆が途絶えてしまった患者ほど、しぶしぶと姿を現した肉親に呆気なく見捨てられる。死後の医療訴訟どころか延命治療に対しても消極的で、『これ以上の処置は結構です。医療費の無駄使いですから』と、平然とした口調で言う者もいる。 だけど……彼女はまだ28歳。そんな無情な最期を迎えていいはずが無い! 心臓が不吉な拍動を繰り返すだけで、震えが走る体は塊の様になって動かない。 「――しかも、悠希を上手く利用したわね」 眉間に縦ジワを掘る麗香が言って、苦々しく舌打ちしたのが耳に届く。 「えっ?……直江先生を利用って」 「今回の執刀医は亜紀の旦那だけじゃ無い。同じステージに立った悠希も同罪。…悠希がどんなに肝臓で悪戦苦闘しようと、結果は同じよ」 そんな――― 「術中死が起きた時、直江先生にも責任を負わせようとして!?」 だから、直江先生に同じくオペの執刀を持ち掛けたと言うの!? 目を皿のようにして声を上げる。 「あの極悪非道な男が考えそうな事じゃない。日頃から目障りなハエだと蔑視する相手だもの。利用するには適役なのよ」 苦笑する麗香は目を細くして、机の上に置いたPHSを再び白衣に入れた。そして組んでいた長い足を解くと、切れ長の目に怒りを宿して立ち上がる。 「……麗香?」 「亜紀、行くわよ」 「えっ、行くって……どこに?」 「オペ室のモニター管理室。いつまでもこんな所に閉じ籠って仮説並べて、二人でサスペンスドラマのシナリオ作りしてても時間の無駄。私達で楓のオペを見届けるのよ」 そう言って私を見据えると、麗香は白衣を翻して廊下に続く扉を開けた。
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