枯れた華

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お父さん……… お父さん…… 「お父さんっ!」 掠れた声が喉から洩れた。 飛び起きた拍子にスルスルと薄手の綿毛布が体から滑り落ちる。 ドクドクと身体中を走る不快な拍動。 「やだ…またこの夢…。しばらく見てなかったのに…」 額に滲む汗。 背中と首筋にも冷たく湿った感触がある。 「あれからもう18年も経つのに…」 手のひらで額の汗を拭う。 セミダブルのベッドが2つ並ぶ、夜明け前の静かな部屋。 ベッド台のオレンジ色の灯りがぼんやりと暗闇を照らす。 体を起こした腰の辺りに、本の硬い角が当たっているのに気づき体を捻る。 そうか… 論文読みながらいつの間にか寝ちゃったんだ。 大きく息をつき、本にしおりを挟んで台に置いた。
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