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「どうでした?」
「お父さんはまともな人で、ちゃんと話が通じた。お母さんはパニック障害みたいなものがあるらしい。『ああ、妻に言っても無駄だと思います』みたいなこと言ってたし」
「パニック障害?……ああ、なるほど」
声を落とし、苦笑いをする私と加藤さん。
それはそれとして、
「オペの承諾が取れたんですね!Aさんに持病は?」
「特に無いらしい。精神疾患があることも知らなかったみたいだ。いつ発症したのか…まさか、気づかなかった訳じゃ無いよな。ここまでの状態で」
先生は、最後の傷を縫合しながら複雑な表情を浮かべる。
「気づかなかったって……」
例えば、母も鬱病、子供、その兄妹も鬱病。家族内で精神疾患を患う事も珍しくない。
お母さんがパニック障害だからAさんも何らかの影響が?
それに、お父さんの言葉。――「妻に言っても無駄だと思います」って……冷淡さを感じずにはいられない。
そもそも、こんな時間に二人の携帯に電話したと言うのに、電話口で興奮状態になる妻を夫は見ていなかったのだろうか。両親は一緒に暮らしているの?
様々な疑問が頭に過るが、家庭の事情を詮索する権利も無ければ場合でもない。
それより今は、Aさんを一刻も早くオペ室に運ばなきゃ!
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