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「ごめん、お待たせ。やっと処置終わった。こっちの出血はどう?動脈性?静脈性?」
突然と背後から聞こえた声。
「三枝木先生!」
手にディスポ手袋を嵌めながら登場したのは、頭部外傷の処置を終えてヘルプに来てくれた三枝木先生。
三十代前半、坊ちゃんタイプの脳外科医だ。
「おそらく静脈性だと思うけど…出血部位が開創部より深いところにあって、正直この状態ではよく見えない。今、オペ室待ちしてる。
…よし!両腕はナート終了!櫻井さん、オペ室のスタッフはあとどれくらいで到着する?」
坂上先生は持針器とクーパー(ハサミ)をトレーの上に置き、顔を上げて私に声を掛ける。
「第1コールのスタッフは、そろそろ到着すると思います」
到着しても着替えがあるから…
「5分程度かと!」
「5分か……何とか血圧安定してるし、ぼーっとしながらも会話できるし、それくらいなら待てるか」
坂上先生はAさんの意識状態を確認しながらポツリと言う。
「静脈性の出血なら、出血部位を確認してここでも結紮(糸で血管を縛る)が出来るんじゃないの?このまま手を拱いていても時間が勿体無いし」
加藤さんとバトンタッチした三枝木先生は、首のガーゼをゆっくりと捲りながら傷を覗き込む。
相変わらず、圧迫止血の手を外すとジワジワと染み出て来る血液。
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