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「どうするんですか?結紮に入りますか?それとも待ちますか?」
「とにかく吸引!急いで!こうなったら結紮しなきゃどうにもならない」
坂上先生の指示が飛ぶ。
内心、坂上先生も思ったであろう……
安易に手を出すなよな~このっ、ドジっ!と―――
「はいっ!結紮準備します!糸の太さは幾つで行きますか?」
私は指示通り、今から始まる処置に必要な材料を次々とトレーに投げ入れる。
「吸引準備出来ました!現在、血圧166の98、脈拍87、サチュレーション(酸素飽和度)96%!」
加藤さんの緊迫した声が処置室に響く。
「静脈性の出血じゃなかったの?」
血液を吸引しながら、三枝木先生がバツが悪そうに呟く。
「……」
無言で出血部位を探す坂上先生。
だから、コアグラは触るなと言ったのに!
今更言っても仕方のない事だと分かってはいても、あの瞬間に嫌な勘が働いていただけに悔やんでならない。
「…坂上先生は『おそらく』って言いましたよ」
冷たく言って、無菌手袋を嵌めた私は鉗子の先に糸を付けて結紮開始のスタンバイをする。
「糸っ!」
「はいっ!」
「三枝木先生、そこ。出血部位はおそらくその奥。吸引して視界確保して。俺が糸掛けるから」
懸命に処置にあたるドクターの額には、汗が滲む。
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