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矢田部さんは私より二つ年上で、オペ室歴4年目のナース。それ以前はこの外来に勤務していた、私の先輩だ。
「オペ室の準備完了?じゃあ、セカンドコールのスタッフも既に到着したんですね!良かった~」
「あ、そっちは未だ。本来、今夜はうちの病院二次救急の担当じゃないから、拘束されてるのはファーストコールの私だけ。ヘルプのもう一人は、到着するのにあと20分くらいかかるみたい」
矢田部さんは移動準備をしながら淡々と言う。
「20分!?なら、それまでオペ開始できないじゃないですか!矢田部さんが機械出し(器具を渡す直接介助ナース)をするとして、外回りはどうするんですか?…あ、矢田部さん一人で大丈夫とか?」
「まさか。機械出しと外回り、二人いるに決まってるでしょ?」
「決まってるでしょ?って……」
オペ室に持って行く交換用の点滴薬剤をトレーに入れながら、私は眉根を寄せる。
「外回りは櫻井さんがやるに決まってるでしょ~」
「えっ……ええぇぇ―――っ!?私がオペに入るんですか!?」
当然の事のようにさらりと言う先輩の横顔をまじまじと見て、私は仰天の声を上げた。
「だって、他にオペ室経験者いないでしょ?ユリさん勤務じゃないし」
「そ、それはそうだけど……私、オペ室の部外者だし」
「ああ、それは大丈夫。さっきオペ室の師長と外来の師長に電話して、ちゃんと許可とったから」
「へっ?」
「師長二人、『櫻井さん頑張ってね』って、伝言預かったから」
「ええ――――っ!?」
頑張ってねって……なんて薄情な!!
だけど……
あの師長達なら言いかねない。事もあろうに、二人ともがそう言うキャラの師長なのだ。
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