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「そうそう、それそれ!」
矢田部さんは指でOKサインを作ってコクンと頷いた。
予期せず引っ張り込まれたプレッシャーと緊張感の中で、オペ室スタッフとして働いていた頃の感覚が徐々に蘇っていくような気がした。
坂上先生と矢田部さんの精神的フォローのおかげで、機械の揃っていない透視室で行ったあのオペよりもまだマシだとも思えて来る。
「モスキート」
「はい!」
「糸3-0」
「はい!」
「こっちにクーパー頂戴」
「はいっ!」
執刀医と直介ナースの掛け合いが続く。
「櫻井さん、もう直ぐ洗浄に入るからここに生食(生理的食塩水)入れておいて」
「はいっ」
私は矢田部さんのフォローを受けながらオペ室の中を動き回る。
先生が足もとのキックバケツに落としていくガーゼは、真っ赤に染まっていたものから次第にガーゼの白色が斑に見えて来る。
出血が止まってきている証拠だ。
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