3月10日…お久しぶりです。

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時間はもう直ぐ深夜0時を回ろうとしている。 昼間から戦場の様な慌ただしさが続いた外来が、やっと落ち着きを見せる時間帯だ。 「そうか、良かった。こっちはあと10分くらいで終わりそうだから」 点滴の電解質溶液と混ざり合って、Aさんの体内に届いたばかりの血液が送り込まれていく。 「もう大丈夫ですね」 Aさんの命を繋ぐ血液の流れを見て、私と同様に加藤さんが緊張の糸を解く。 「うん、もう大丈夫。助かって良かった…本当に良かった」 そう言って、私は肩の力を抜いて加藤さんに安堵の笑みを返した。 「Aさん、手術は無事に終わりましたからね。体に掛けてあるシートを外しますよ」 笑みを浮かべながら、私と矢田部さんが血液の付着したシートの両端を持ってゆっくりとシートを剥がしていく。 天井を見上げるAさんは視界を明るく照らす照明を見て、トンネルから抜け出した時の様に眩しそうに目を細めた。 「大丈夫ですか?分かりますか?」 矢田部さんがAさんの顔を覗き込む。 「……はい、分かります。大丈夫です」 Aさんはゆっくりと目を矢田部さんに向け、ポツリポツリと答えた。 「Aさん、手は動く?首に巻いてあるガーゼを自分の手で触ってみてよ」 坂上先生はオペ着のガウンを拭ぎながら近づいて、感覚に異常が無いかを確かめるためにAさんの右手をツンツンと突っつく。 言われた通りにAさんはゆっくりと手を上げ、首に巻かれた分厚いガーゼに指を触れる。 「君が自分で切ったここ、しっかりと血は止まったからね。このまま数日入院して貰うよ。心療内科の先生にちゃんと心のケアもして貰おう」 外来に戻るため周囲の機材を退かしながら、私達はAさんに話をする坂上先生を安心した目で見守る。
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