第1章

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 翌日。  何故か俺は警察署に任意同行を求められ、取調室の中にいる。  「あのぉ、どうして俺が、」  二人の男に尋ねる。  「貴方が彼に『ガツンといってやれば良い』と言ったのは、事実ですか」  目の前の厳つい男が、鋭い眼差しで俺を威嚇する。  「た、確かに言いましたけど、それは言葉のアヤってやつで、」  ふぅ、と溜め息が聞こえてきたと思ったら、違う男が言った。  「彼はあなたの言葉に従っただけだ、と言ってますよ」  どういう事だ、意味が分からない。  唖然としている俺に、厳つい男が言い放った。  「彼は、あなたに、婚約者の殺害を示唆されたと言っていますよ」  「はっ」  何故だ。  いつ、俺がそんなことを言った。  「『ガツンと行って殺れば良い』と言ったのは間違いないんですね」  再度繰り返される言葉に恐怖を感じる。  嗚呼、そう言うことか。  ヤツは俺のアドバイスを明確に遂行したのだ。  婚約者に文句を言わせない為に。  『ガツン、じゃなくて、ゴツン、でした』  意味が、繋がった。  痛い位に心臓の音だけが頭に響く。  「あなたを、殺人教唆の疑いで緊急逮捕します」  両手に冷たい金属製のモノが嵌められる。  「精々頑張って、囚役をこなせよ」  まさか、あのアドバイスが自分の首をしめることになるとは思わなかった。  不意に、アドバイザーというライセンスの意味が分かった気がした。  歩きながら、窓に目を向けると、蒼空を白鳥が群を成して飛んでいるのが見えた。  『最近の若者は分からない』  自分の軽率さが実に沁みた。 終。
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