第1章

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文化部の活動も終わったらしい。 僕が歩いている二年生の階にもチラホラと人がいた。 特に親しい顔もないので、スタスタと下駄箱に向かう。 とりあえず、あそこに行く前に準備しないと、一回帰ろうと思いつつ下駄箱から外履きを取り出す。 履き替えた上履きを下駄箱の中に入れようとした時に、声がした。 「あれ?雅人じゃん」 振り向けばそこにいたのは礼央。 この暑い夏でバスケという走り回る競技をしてきて汗をかいたからなのか、彼から某制汗剤の匂いがする。 「なんだよー、お前も一緒に帰ろうぜ」 近くに来て肩を組みながら彼はそう言った。 俺の気持ちを二人は知らない。 だからこういうことを普通に言ってくる。 「カップルの、お邪魔をする気はねーよ」 これ以上言われると、イライラしそうだ。 肩に乗った手を弾き上履きを下駄箱に放り込み、外に体を向けた。
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