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「それよか、お前の方こそ大丈夫なのかよ?アナウンサー希望なんて山ほどいるだろ?それに今までいる人達だって簡単に辞めるような職業じゃあるまいし。お前の方がのたれ死ぬ可能性高いだろ」
「勝手に殺すな禿げ!」
せっかく心配しているのに帰ってきた言葉が「禿げ」……否定の前に心が折れてしまう。
「そんな先まで考えてなんていないよあたしは。とりあえず、目先の目標に向かうだけさ。厳しい世界だからこそ、着実に1歩1歩進まないとね」
その言葉に俺は何度も相槌を打った。それは日々俺が心に留めている事だったからだ。
ゴールが一緒であれば積み重ねた1歩の数が、1歩の重みが重要になってくる。どれだけの高みに登れるかは、その1歩が大事だからだった。
努力は必ず実るーーーそんな言葉は決して吐けない。それは俺自身も身を持って何度も経験している。
だが、積み重ねた努力は何かしら自分の糧となり生き続けるのだ。
無駄な努力など一切無い。
いや、努力以外でも無駄など一切無いのだろう。
身を持ったからこそ俺は理解出来た。肩の怪我をしたからこそ、他人の痛みや苦しさを分かるようになれたし、優しさを知る事が出来た。
自らの命を失いそうになったからこそ失う怖さを知り、大事な人を失わずに済んだ。
全ては不幸な積み重ね……そんな積み重ねでも今の俺を形成する1部なのである。
1歩の積み重ねの大切さ……それをミコトが知っていてくれるのが俺は嬉しかった。
そのせいか余計な言葉が口から漏れてしまう。
「さすがはミコトだな。愛してるぞ」
その言葉にいつも通り「はいはい」とあしらうミコトの姿を想像していた俺は、予想外の姿に目を丸くしてしまっていた。
お調子者の外見ビッチなミコト。こんな言葉は聞き慣れているはず……が今は、その言葉に不快感をあらわにして俺を睨み付けていたのだった。
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