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「えっ?あれ?ミコトさん……?」
動揺した俺はしどろもどろにミコトの名を呼ぶ。
何度か見た事のある真面目に怒っている表情だからだ。いつもの軽快な笑みは完全に成りを潜めている。
こんな冗談いつもの事だろ?俺は頭の中で言い訳していた。それは、俺の言葉がミコトを怒らせたのを自覚しているからだった。
なぜ急に?そこまで考える余裕の無い俺は、ビクビクしながらミコトの様子を覗くしか出来ない。
そんな俺を見ていたミコトは大きく息を吐き、少しだけ怒気を含んだ表情を緩めてくれた。
「はぁぁぁぁぁぁ………………汚点だわ……完全に油断していた……ああっもう!この数秒を消し去りたい!……夕日にお願いしよっかな?」
「待て!あいつは時を操る番人じゃねえぞ!しかも、あいつが消せるのは俺の時間だけだ」
「それでも充分よ!」
「それこそ待て!時間どころか俺の存在すら消しかねん!」
そこまでしてミコトが消したい数秒が俺には理解出来なかった。
「最近何も聞いていなかったせいか、不意討ちに反応しちゃったじゃない!もう!」
頭を抱えながら悶絶するミコトを見ながら俺は茅の外にいた。
「何とも思っていないはずなのに!何で今さら反応しちゃうかな?あたしのバカ!バカ!バカ!」
とても取り乱していらっしゃるミコトを見るのは稀で、そんな貴重な瞬間をさっきの疑問など忘れ見入っていた。
「うわーーーっ!忘れろあたし!今のは放送事故だ!いや、録画なら取り直しが効く。よし、全てやり直しだっ!」
「……で、一体何があったんだミコト?」
「はぁっ!?」
「いやだから、何があったのか聞いているのだが?」
「ちょ……マジで分かっていない?」
「大マジ!」
「………………あたしの数秒を返しなさいよ!」
「消し去ろうとしたり、返そうとしたり忙しい奴だなお前は」
「うっさい!若年性痴呆症!」
「酷っ!」
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