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車に多少の興味がある俺は、外に出て瑞希元会長の車を舐めるように見ていた。
「……車に対してまでだと……妄想擬人化か?」
「この車じゃ、マッチョの大女しか妄想できねぇよ!」
「……もしくは、マッチョの兄貴」
「そんな妄想してたまるか!」
と言いながら無意識にお尻を押さえる俺だった。
「本当に凄えなアイツの妄想力は……もしかして、ここにいる全員がアイツに妄想されているんじゃ……うわぁぁぁぁっ!キモッ!」
「お前のそれも妄想だろ!」
「夕日、妄想ぐらい誰でもするじゃないですか。多少は許してあげて下さい……私も……」
最後のセリフは誰も聞こえないぐらい小さな声だったが、なぜかましろだけは聞き逃さないでいた。
「……妄想の世界でいたぶるとは……なんという女狐」
「め、女狐?」
「ああ、お前は昼時になると必ずリビングで昼ドラ見てるもんな……昼ドラと現実を一緒にするんじゃねえよ!」
「……空は妄想と現実を一緒にしてはいけないわ」
とてつもない敗北感を感じながら、この話だと俺に勝ち目が無いと悟ってしまう。
結局俺は敗北感を抱きながら、瑞希元会長の車に視線を戻していた。
大きな車体に見合う大きな内装。いかにも新車を匂わす綺麗さだ。
一応、汚さないように気をつけながら、窓から内装をジロジロと見る。
薄いスモークのかかったガラスの為、なかなかしっかりと内装を確認する事は出来ない。
そんなガラス越しの内装にそぐわぬ物が視界に入った。それは、2つの大きな荷物のように見える。
だが、その荷物をじっくりと見ると……
「ひいっ!?死体!?」
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