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家に入る余裕も無い2人に海はコップに注いだ水を外まで持ってきて介抱している。
「ありがとうございます海さん。少し気分が楽になりました」
「ありがとー海ちゃん。いやーマジで吐く3秒前だったわ」
やっと1息つけた2人は、普通に会話出来るぐらいは回復しているが、まだ体力的には回復しておらず地面に座ったままだ。
「御愁傷様……つーか、2人はなぜ瑞希元会長の車に?暑いからスリルを味わいたくて乗ったのか?」
軽い冗談だったのに2人の目付きが急変する。しかし、まだ完全に回復しきれていない2人は、反論するだけで精一杯だった。
「これは一種の拉致ですよ……僕とミコトさんが学校に居たら瑞希元会長がいきなり車でやってきて……」
「こんな運転なら身ぐるみ脱いででも逃げたわ!」
「お前はトカゲか?」
「学校から空の家までの数十分でかなり痩せたわ!胸のカップが1つ減るぐらいにね!」
「……朝日は乗っちゃダメよ」
「絶対に乗りません!これ以上は死守します!」
胸のカップが減るぐらいの恐怖体験などあるのだろうか?なんて事を考えながらも、実際にミコトは少しやつれているように見える。
だが、実際に体験していない俺は、にわかに信じられないでいた。
「大げさだな2人共。一応、事故無く家まで来たんだから、いくら荒い運転でもそこまで……」
「乗れ!さっさと乗れ!いいから乗れ!このチキン野郎!」
「瑞希元会長、空を連れてドライブしてきて下さい!ええ、なんなら高速に乗ってでもいいですから!」
まだ復活したわけじゃないのに、2人はいきなり元気にまくしたてたのだった。
逆鱗に触れた事によって怒りが2人を突き動かしたのだろう。
そんな安い挑発にのる俺がいる。
「おう!乗ってやろうじゃねえか!」
2人の様子と瑞希元会長の性格からして、かなり運転は荒っぽいのだろう。だが、運転に関しては我が母の運転もかなりのものである。
そんな運転に幼少の頃から慣れ親しんだ俺にとって、これぐらいは大した事ないだろうと余裕をぶっこいていたのだった。
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