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結局、ましろは車から降りず2人を乗せて車は発車していった。
「ねえ、何の用意が必要かな龍?救急車?霊柩車?」
「とりあえずは水じゃないでしょうか?」
見送る2人はどこか悟っているように見える。
「そういえば2人共、夏休み中に学校?大変だな部長に生徒会長は」
「よく言うよ夕日。あんただって全国準優勝でしょ?最後の大会に向けて、こんな所でバカを痛ぶっていていいのかい?」
「最後に負けたストレス解消!」
「そ、そんな理由で着いてきたのですか夕日!?」
「まあいいじゃないですか委員長。空にはご褒美ですから。それに少しは慰め……」
「な、何を言おうとしているんだよ龍!んな訳無いだろ!」
「そうですよ澤村先輩。兄さんがそんな気が効くわけないじゃないですか」
「無意識という、たちの悪い言動をする人も世の中にはいるのですよ。周りを誤解させて」
龍の言葉に全員が全力でうなずいていた。
そんな何でもない会話を続けながら、誰も家に入ろうとしていない。準家主の海でさえ、家に招こうとしていなかった。
やはり心の奥では心配なのだろう。そのせいで家の中に入るのを躊躇ってしまう。
「南無妙法蓮華経……」
「ほ、北条さん!縁起が悪いでしからお経を唱えないで下さい!」
「卒塔婆も必要ですかね?」
「澤村くんまで!」
確実に死を予想している2人。
数十分後……不安と死が蔓延する家の前に、最初と同じく急ブレーキをかけて車が帰ってきたのであった。
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